八木 第54稿

公平がそんなバイトをしていたとは知らなかった。
バイトでいうと引越しのバイトをした。
朝に営業所に集まる。
そこで何処に行くか振り分けられる。
ドライバーさんと、社員さんがおられ、そのアシスタントをするのだ。
現場は、淡路島の新築だった。
今の家から荷物を出す。
本の段ボールがやたら重かった。
何回も繰り返す。
冷蔵庫は社員さんが運ぶ。
見事だ。
全てが見事なのだ。
そっから移動。
その社員さんの武勇伝を聞く。
今まで女と何人やったかの武勇伝である。
それを羨ましそうに聞く。
淡路島の新築の家に荷物を運ぶ。
新築や、気をつけろと何回も怒られる。
考えてみれば当たり前である。
バイトが終わり一万円貰う、パチンコに行く。
マジックカーペットという、羽根モノをする。
2000円する。
珈琲を飲んだので7900円握りしめて電車で帰ったのが懐かしい。

公平

高校生の時、バスケット部の先輩と下校中に誘われて
展示即売会のばらしのアルバイトをしたことがある。
それが生まれて初めてのアルバイトだったように思う。
たくさんの高校生が帰り道に誘われて、即席でバイトに参加していた。

列にならばされ、順番に腕にマジックで大きく時間を書かれた。
ずいぶん粗いバイトだった。
荷物をトラックに積んでいくのだが
200万円ぐらいするようなツボから
中古のAVまで色々運んだ。 

50万と値札のついた机の脚をハンマーでたたき天板と脚に分けていたやり方をみて
そういう商売の人達なんだなと思った。
作業途中、休憩ということで、箱で売っていたであろう、ぬるい缶コーヒーを
渡され飲んだ。

「バリーーーン!!!」
大きな音が会場に響き渡った。
私の先輩が100万ぐらいするツボを割ったのだ。
それを観た瞬間「あっこの人殺されるのかな?」と思った。
リアルに時間が止まった。
先輩の顔は白かった。

しかし次の瞬間「かまへんかまへん横置いといて」と
むこうの社員の大きな声が聞こえた。
そこにいた全員が
「やっぱりこれは100万じゃないんだな」と思った。

帰りにまた列に並ばされ、腕の時間をみせる。
札束の入ったアタッシュケースを見せびらかすように広げる男から
お金をもらった。
「そういう人達なんだな」と思った。

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