サバンナ八木 かやぶき君 194

サバンナ八木 かやぶき君 194

テストリーは、前日の出玉から、設定を予想する。
予想すると言うか、子役の出方を見て設定を判別するのだ。
そして、その高設定が、閉店してから、変えられるかどうかをまた予想するのである。
その読み合いなのである。
心理戦である。
台をとり、確認しながら打っていく。
ビッグボーナスを引いた時に、それが運が良かっただけか、高設定でひいたものかを判断しないといけないのだ。
ビッグボーナスをひいてもうかれることはない。
職人のように台の設定を見極めるのであった。

公平 

夜の公園でその男をみたとき
死体を埋める穴でも掘っているのかと思った。

かやぶき君だからこそ
その穴を掘っている男に近づけたんだと思う。
かやぶき君は声をかけた。
「何をしているの?」

男はさほどびっくりした様子もなく答えた。
「穴を掘っているんだよ。声を埋める用の」

「声を埋める?」
「そう。穴を掘って嫌いな奴の名前をその中でつぶやいて埋める」
「いや、王様の耳はロバの耳じゃないんだから」
「俺だってはじめた時はこんなにハマると思ってなかったさ
でもやり出したら、毎日しないと気がすまなくなっちゃって」

まあまあ淋しい奴だなぁとかやぶき君は思った。

「一度君も呟かないか?」
「いいよ、おれ嫌いな奴いないし」
「一度やったら君もハマると思うよ」

かやぶき君が
トイレの水を流す少し前に
ボソボソとつぶやく癖がついたのは
この頃からである。