サバンナ八木 かやぶき君 148

サバンナ八木 かやぶき君 148

鴨川で、女の子に必死に喋る。
今だに中腰である。
これをしっかり、座ると、ちょっととなるので、中腰をキープする。
そして、気づかれないように、ほんの少しづつ、腰をおろしていく。
ほんの少しづつ。
波が岩にあたり、岩を侵食して、奇妙な形の岩ができたりする。
ほんの少しづつ、波が岩を削っているのである。
それぐらい、少しづつ、腰をおろしていくのである。
そして、気づかれないように座っていた。
歩いている人からすると、これはもうカップルである。
そして一方的に喋っていたのを、気づかれないように、聞き側に移っていくのであった。

公平 

ポタっ。

額に落ちた水滴で目が覚めた。
ぼんやりした視界がハッキリしだす。
高い天上が見えた。工場?

どうやらイスに座っている。
動こうとしたが、動けない。
あぁ 後ろで手をガチガチに縛られている。

意識が戻ったばかりだが意外とかやぶき君は冷静で
このロープならちぎれない事もないだろうと思った。

コツコツと足音が静かな工場に響き渡る。
背後からその音はだんだん大きくなってくる。

1人だ。 これはおそらくハイヒールの音。
赤色だ。赤いハイヒール。
黒革のボンテージのキャットスーツ。
ブロンドの髪の女だ。

もちろん かやぶき君の妄想である。

ハイヒールと思われた靴の音が前に回り込んできた。
がっかりした。
回り込んできたのは見覚えのないスーツ姿の男だった。

「さぁかやぶき君。悪いようにはしない。
君が組織から託されたFDをこちらに渡してもらおう」

「FD?なんだそれ?っていうか誰だよお前!」

「君の想像するとおりの悪者だよ。
こんな正義の味方いないだろ?さぁFDをだせ」

「だからFDってなんだよ!何かのポジションか?!」

「往生際が悪いぞ。さぁ早くFDのありかを教えろ」

「本気でFDってなんだよ?」

「フロッピーだよ!」

「フロッピー!? えっ?フロッピーって何?」

「お前フロッピーディスクもしらないの?」

「えっ!?…
知らない。ほんとに知らない。
何?そのフロッピーってどんな奴??生きてるの??」

「フロッピーデスクだよ!パソコンに入れるとこあるだろ?
このぐらいの四角いせんべいみたいな」

「せんべい??パソコン?そんなの入れるとこあったっけ?」

「えっ?パソコン持ってないの?」

「えっパソコン持ってるけど、せんべい入れるとこなんてあった?」

「あるだろうよ!えっ?データをいれる奴やで?せんべいみたいなんに。
そうなん?いや、こないだ親戚の子供も似たような事言ってたわ。 
そんなん知らんって。えっ?マジで知らんのか?
今違うんかなぁ」