サバンナ八木 かやぶき君 78

サバンナ八木 かやぶき君 78

女将さんと飲んだり、あいちゃんから連絡があったりして、いろいろあったが、やっと店をオープンすることができた。
小さな居酒屋のスタートである。
オーナーさんがオープンの日に日に飲みに来てくれた。
オーナーさんとその友達でカウンターはつまった。
一人でやりだすと、その大変さに気づいた。
オーダーを聞いて、作って、出して、会計して、さげて、洗い物。
全てをやらないといけない。
これは流行りすぎると大変だ。
単価を高くして、少人数に高めのサービスをする方向に向かうことにした。

公平 

「ここだ」
草レーサーの聖地ヘルズバレイに降り立ったかやぶき君。

この谷は冬12月になると凍結のため通行禁止となる。
雪が降ってしまえば、もちろんだれも通る事ができないが
雪が降るまでの間、この道はいわゆる治外法権となり
草レーサー達の聖地となる。

「地獄谷のスピードギャング」
このヘルズバレイには、ある伝説がある。
この谷で風とマシンが一体化した時
そいつの背中が現われる。

この谷で命を落とした霊なのか
はたまた谷の精霊か。
疾風のごとく現れて
チャレンジャーを置き去りにする。
その背中に追いついた者は
まだいない。

目撃出来る事こそが
草レーサーの憧れであり一流の称号。

この時期そのスピードギャングに会いたいと
世界中からバイカー達がやってくる。

そしてその一人がかやぶき君だ。
ただかやぶき君は間違えていた。

彼が乗って来たのはアシスト着きの自転車だ。
ここまで来るのにも
かなりの時間と労力を費やした。

「でも一応、くだってみるか」

たくさんのバイクに紛れて
自転車のかやぶき頭の怪獣は
もう冷やかしのようにしか見えない。