かやぶき君 63

かやぶき 63

女将さんがいい感じで酔われてきた。
店のカウンターにいた時とは雰囲気が違う。
やはりカウンターを出て客になると、気が緩むのだろう。
僕も酔ってるので、聞いてみた。
お客さんとそういう関係になったことあるんですか。
女将さんは、ほとんどないと言われた。
そう言って、すぐにないよと言われた。
じゃあ、今日、僕がはじめての人になろうかな。
何を言ってるの、そう女将さんは言った。
僕は女将さんの手を握りながら、本当なんだけどなあと言い、その手をさらに引き寄せるのであった。

公平

山菜を摘んできて
友人に天ぷらを振る舞うことになったかやぶき君。
山菜は自ら山に登りとってきた山菜だ。
自宅に5人も来たのは初めてだ。

「かやぶき君ってお風呂湯槽にお湯ためて入るの?」
「最近抜け茅がはすごいからシャワーですます事が多いけどね」

「ワンピース好きなの?全巻あるの?」
「去年大人買いしたんだよ。24巻は智樹に貸してまだ返ってきてない」

「めっちゃスニーカーあるじゃん」
「普段は履かないんだけどね」

山菜について何をきかれても大丈夫なように
昨日徹夜で知識を頭に叩き込んでいたかやぶき君。
山菜についての質問は最後まで出なかった。
少し残念。
ただ美味い美味いと言って食べてくれるみんなの笑顔で
酒を飲む。