サバンナ八木 かやぶき君 19

かやぶき君 19

かやぶき君、彩月さんにキスをした。
彩月さんを見ると涙が溢れ落ちていた。
この涙はどういった涙なのだろう。
想像できるだけ想像してみる。
彩月さんは結婚していている。
家庭がうまくいってない。
それでほぼ別居状態である。
そして今カフェの店員とキスをしている。
わたし一体何をしてるんだろの涙。
こんな可能性も。
好きな人がいて、告白してふられてしまった。
失恋して、流れでカフェの店員とキスをした、わたし一体何をしてるんだろの涙。
どっちにしてもわたし一体何をしてるんだろとなってしまうのだ。

公平

ある男から「久しぶりに会わないか?」と連絡をもらった。
昔よく行ったあの喫茶店で待ち合わせだと電話をきった。
かやぶき君がここの駅にくるのも
もう何十年ぶりだ。

喫茶店は昔のままだった。
あの当時から老舗感を出していたように思う。
店に入って出迎えてくれたのはバイトであろう若い女の子だった。
見渡したところ当時のマスターはいなかった。

この喫茶店は、共通の「サボリ場所」として
鶴仙人の元で修行中、用事をつけては抜け出して
ここに集合し、師匠の悪口や将来の夢について語りあった場所だ。

先に到着したかやぶき君はそんな遠い昔の事を思い出しながら
マスターこだわりの珈琲を飲んでいた。
この珈琲の味も懐かしく愛おしい。

長身で大柄な男が店に入って来た。
一目それが天津飯だとわかった。
少し太っていたが、なにしろ目が3つあるので
間違いようがなかった。
彼もすぐにかやぶき君のことに気付いた。
「ひさしぶり!元気してた?まぁSNSで最近のお前の情報は
チェックしてるけど」
まっすぐつばの野球帽にスタジャン、そしてデニムにバッシュ。
韓流系のファッションだ。
昔、ジャンプの巻頭カラーで他のキャラクターと
くだけた服装で登場していたあの感じだ。

彼は数年前から格闘技の道場を作った。
ダイエットブームも合わさり、全国展開し大成功。
合わせて、特技の中華料理の店もOPEN。
あれよあれよという間に全国チェーンとなった。
今や「時代の風雲児!三つ目の社長」と
有名人になっていた。

そんな彼から急な連絡。
同門の同期とはいえもう何年も前の話だ。
何か用事があるんだろうなと思った。

(つづくかな?)