サバンナ八木 かやぶき君 17

かやぶき君 17

彼氏が欲しい、その言葉、以外だった。
てっきり、彩月さんには彼氏いや、結婚していると思っていた。
ただ、彼氏や結婚していても、今の彼氏や旦那に満足しておらず
彼氏が欲しいと言った可能性がある。
かやぶき君は流れ星に向かって願い事をする。
「彼女が欲しい」
ここで彩月さんの反応を待つ。
今彼氏が欲しいという言葉を放ったばかりである。
需要と供給の理論でいうと結ばれるはずなのだが。
彩月さんからは何の返答もなかった。
もし、付き合ってと言って断られたら、これからこうやって会う事もできなくなる。
そう考えると、その質問をするのが怖かった。
「どれがカシオペアかな」
カシオペア丸出しの星座を見ながら彩月さんに聞くのであった。



公平

かやぶき君はこの島の医者になってもう10年になる。
今では「Drブッキー」と島民みんなから慕われている。

診療所には毎日お年寄りが、話相手を求めてやってくる。
そのほとんどは健康だ。
昨日は、診療時間終了後に常連のたえさんから
電話があった。
「かぜで体調が悪いから、明日は行けません」

受診料はそれぞれの畑で採れたお野菜や果物だ。
かやぶき君はそれで十分良かったし
どこか故郷美山と似ているこの島が大好きだった。

でも看護師の彩佳は知っていた。
ブッキーが東京の有名な大學病院からの誘いを
断り続けている事を。

かつて、ブッキーはドクターKとして
東京でたくさんの重病の患者を救ってきた。
どういういきさつで、この島に来たか
詳しくは知らない。
雑誌にも載るようなエライお医者さまが、何人も
この島に訪れ、ブッキーを連れて帰ろうとした。
しかし彼は首を縦に振らなかった。

そこには、彩佳が知らされていない理由があった。

彩佳の身体はある病気に蝕まれていた。