サバンナ八木 かやぶき君5

サバンナ八木 かやぶき君5
サーフィンの聖地と聞き、物件を見る前に
海を見に行くことにした。
海を見るとサメの背中のようなものが見えた。
それは岩であった。
サーフボードを持った人がとすれ違う。
考えてとるみれば今まで川でしか遊んだことしかなかった。
夏でも冷たい川ではよく遊んでいた。
川の流れに体をまかし泳ぐのが得意だった。
川は急に流れが強くなったり、深くなったりするので注意が必要だ。
無理をしない、安全確認、それは人一倍気をつけてきた。
海、まだそれは経験したことがない世界、それはとても魅力的に映った。




公平

彼は京都に住んでいた頃ある噂を聞いていた。

「海の見える東の街にえらく人気物の怪獣がいる」

怪獣なのに?人気者?
そんな訳がない。
怪獣とは忌み嫌われてこそ怪獣だ。

そしてその街は「ファンタジア」と呼ばれるらしい。

「ファンタジア…」
そんな街本当にあるわけがない。
自分に言い聞かせて、かやぶき君は、これまで生きてきた。 
しかし同時にファンタジアが本当にあるなら行ってみたい。
と思っていた。

ただその野望は
人に話した所で「そんなのただの絵空事だよ」と
笑われるかもしれないと
心に秘めたままにしていた。

ファンタジア。
それは突然現れるの場所なのかもしれないし
永遠にみつける事が出来ない空想上の楽園なのかもしれない。
東の怪獣には仲間の怪獣もいると聞いた。
怪獣は毎日仲間たちと楽しく歌をうたい、ダンスをしているらしい。

ダンスがしたい。
自分もたくさんの友達をつくって
輪の中で歌いたい。
林間学校でやったキャンプファイヤーのような事を
想像していたかもしれない。
ただ彼はいつからかそう願うようになった。

「歯を見せるな!」
厳格な父の元、怪獣らしく生きていけと
かやぶき君は厳しく育てられた。
父は、他の生き物と仲良くすることをあまり良しとしなかった。
だから仲間がたくさんいるといわれるその人気者が
羨ましくて仕方なかった。

綺麗なお姫様たちもたくさんいてるとも聞いた。
海のお姫様、森のお姫様、カボチャの馬車に乗ったお姫さま。
中でも気になっていたのが
雪のお姫さまとよばれる女性だ。

美山の冬は厳しい。へらへらしていては
雪に足元はとられ、すべって転んでしまう。
そんな冷たい雪を支配できる、お姫様。

想像するだけで
かやぶき君の頭に積もった雪が解け出す。
すぐに地面はびちゃびちゃだ。