サバンナ八木 かやぶき君 6
かやぶき君 6
かやぶき君の前に海が広がる。
砂浜を歩く。
その砂の黒みがかった色に驚く。
その昔、日本海に行ったことがあった。
その日本海の砂は白かった。
湘南の砂浜は黒かったのだ。
砂浜の砂がこんなにも色が違うんだということを知る。
かやぶき君は地元が湘南の人が凄く羨ましくなった。
夕方は海で遊ぶのだろう。
当たり前のようにサーフボートを持っているのだろう。
そしてデートは海を見ながら砂浜でするんだろう。
みんな海での淡い思い出があるのだろう。
そんなことを考えると羨ましくて仕方なかった。
公平
「今回のフライトが怪獣類、いや人類にとって初の怪獣飛行士フライトとなります」
かやぶき君は宇宙船のコックピットにつながる長い廊下の奥の個室に案内された。
m78星雲に未だ宇宙怪獣が生息すると確認されて数か月。
政府からの連絡は携帯にきた。
m78星雲 光の国。
銀河系から300光年離れた場所だ。
「昔、地球が毎週怪獣に襲われていた時代があった。
これだけ広い宇宙の、片隅にあるこんな小さな星に来てわざわざケンカするんだもん
そら私達の先祖にしてみたら、こんな理不尽な話はなかったと思うよ」
そう説明してくれるのは、電話をくれたジャクソンさんだ。
今や地球において市民権を得た怪獣のルーツはその光の国にあるんじゃないのか?
あれだけケンカをしに来てた怪獣たちは今どうしてるのか?
はるか昔の人間がなんらかの形ですでに移住し、今も文明を築いているんじゃないのか?
今回の宇宙フライトに課せられた任務は相当な意味を含んでいる。
かやぶき君は少し考えさせてほしいと部屋を後にした。
フライトの予定メンバーはある程度決まっているらしい。
リストの中にカメムシが入っていた。
「美山は今頃雪かもしれないな」
窓一つない長くまっすぐな廊下をかやぶき君は歩いた。