サバンナ八木 かやぶき君 236

サバンナ八木 かやぶき君 236

城から、海はだいぶ遠かったが、魚を食べることはできた。
鯖寿司のように酢でしめるか、干物である。
ただ、桶に海水をはり魚を泳がせて持ってくる魚屋さんもあった。
値段は10倍にも跳ね上がる。
ただ、その魚の刺身は最高である。
身はプリプリとした食感である。
ただ、海水をはった桶に魚を泳がせて持ってくるのは波でない。
ただ、大名には日常的にゆるされた特権なのであった。

公平 

想いがけない冷え込み方をした春の日。
桜がチラチラ舞うような雪が降った。

かやぶき君は自転車を捨てて
駅のホームにかけ上った。
萌が乗る電車が到着した時だった。

扉吸い込まれて行く萌の横顔がちらっと見えた。
窓に群れている萌の友達のかたまりを
息を整えながら
少し離れてみていた。

萌が今日上京することは
人伝えに聞いた。
となりのクラスだったかやぶき君は
萌とは一度も話したことがなかった。

ただ高校最後の思い出に顔だけでも観れたらと来たものの
その輪に飛び込むには
面識がなさすぎるし
なによりかやぶき君には
この期におよんで
気になっていることがあった。
しかも2つ。

それは2つともここにくる道中。

ひとつは公園のベンチに去年亡くなったはずの
となりのウメおばあちゃんが座っていたのを
見てしまった事。

もう一つは
すれ違った車を運転していた
タケオおじちゃんの横に
奥さんではない知らない女の人が乗っていた事。

正直 萌どころじゃない自分がいた。