かやぶき君 90

かやぶき君 90

店もありがたいことに常連さんでにぎわっていた。
そこで一際、目立つ女性がいた。
美しい髪の毛をしていた。
明るめの色なのだが、それが下品に感じない。
そして髪の毛に光沢があった。
夏終わりはこんがりと焼けていたが、徐々に白くなっていった。
もともとは色白なのたろう。
一際綺麗で、男性のお客さんは意識をして、女性からは憧れの女性といった感じだった。
暗黙の了解でその女性には声をかけないというのがあった。
その女性にある日めちゃくちゃ男前な男性が口説いてきたのだ。
男性は東京でモデルの仕事もしているという。

公平 

この国の深い深い森の奥に小さな城があった。
鬱蒼としたツタや荊に覆われたその城を
街の人々は気味悪がり近づくものはいなかった。

そしてその存在すらも忘れられ
伝説化していた。

その城の一番上の部屋には少女が住んでいた。
少女は、かつて魔女に呪いをかけられ
その姿を虎に変えられてしまった。

少女の父は魔女と戦い
相討ちとなり亡くなった。
魔女は退治できたものの
その魔法が解かれることはなかった。

かつてこの城に仕えたたくさんの執事たちも
1人減り2人減りと皆去っていった。
残った執事はかやぶき君だけとなった。

「お嬢様、今日はお天気が良いので散歩でもしませんか?」

「かやぶき君、実は話しておかないといけないことがあるの」

「なんでしょう」

「去っていった執事たちの話なんだけど」

「お嬢様、私はあなたの執事です。おっしゃらなくても存じております。
私はいつでも、お嬢様に食べられる覚悟はできております」

「いつから気付いていたの?」

「最初からです。口の周りが血だらけだったので」

「そうだったのですね。では話が速いわ。
あなたは今日でクビよ。今までありがとう」

「お嬢様…」

「一応ネットで調べてみたの。怪獣が食べれるかどうか。
でもどこにも調理の仕方は載ってなかったわ」