サバンナ八木 かやぶき君 220

サバンナ八木 かやぶき君 220

隣国の交渉に出かける。
最低人数で行くことにした。
兵隊を連れて行くこともできたが、本気で攻撃を仕掛けてくるなら間違いなくやられるだろう。
下手な犠牲者を出しても仕方ない。
交渉の旅は3人で行くことにした。
本当に行くかというと、運命を共にさせてくださいという。
そこでは何もいわなかったが、もし交渉がうまくいけば、要職につけるつもりである。
隣国への旅が始まる。
隣国だけあり、あっという間に、隣国内に入った。
入り口の警備をしている兵隊に名を名乗り、大名と交渉したいと告げる。
兵隊は焦った様子だった。
兵隊が付き添い、お城に連れて行ってくれることなった。

公平

飲み屋でとなりの席の女2人の話が
聞く気もないのに耳に入ってくる。

「私、もう絶対あいつと縁を切るわ」
「だから何年も前から言ってるじゃないの
 誰も止めてないでしょ」

店の角にある汚く小さいテレビは
パリーグの野球中継。
アナウンサーの声がなんとなく聞こえる。
視聴率はほぼ0だ。

泥酔。化粧もなにもあったもんじゃない。
この姿を男見せたらきれいに別れられるだろうに。

かやぶき君は後輩の山口の話を聞いている。
山口もとなりの女同様泥酔だ。
身体をテーブルに預けすぎて
グラスやらお皿が全部こっちに来ている。
女と同じようなフォームだ。

「おれ仕事辞めようと思ってるんですよ」
「だからお前の場合は別に辞める必要ないよ」
かやぶき君も自然ととなりの女の話を受けてしまっている。

山口がとなりの会話に参加するのに違和感はなかった。

「姉さん、姉さんのその男
そんなに未練があるにはそれなりの魅力が
男にあるからだろ?
おれもそうなんだよ。仕事好きなんだけど
おれは向いてないんだよなぁ」

「あんたわかってるねぇ
そうなのよ、悪いだけの男なら私もとっくに
捨ててるわよ」
「俺だって仕事嫌いだったらとっくにやめてるよ!
かやぶき君がわかってないんですよ」

かやぶき君は
お前の話はともかく
女の話は知らない。
と心の中で思った。

収拾がつかなくなった二人にかやぶき君はお手上げ状態。

すると突然
酔っていない方の女が
テレビを観ながら2人に提案した。

「ねぇ この打席でイチローが打ったら
もうグチは辞めて、今日は帰りましょう」

「イチロー??」

店の角に目をやると
汚いテレビの中で
イチローが打席に立って居た。
右手に持つバットが刀のように見えた。

「バッターはイチロー…」
アナウンサーの声が聞こえる。
4人は自然と座りなおしていた。

「イチローがこの打席で打ったら
グチはやめて明日に備えよう」
テレビに目は向けたまま
かやぶき君も乗っかった。

「打てよ…イチロー!」
帰りたいかやぶき君は力が入る。
酔っていない方の女も同様だろう。

ちらっと山口を見ると
酔いが覚めたかのように
イチローに目をやっている。

何を託しているのか。
勝手に託されたイチローもいい迷惑だ。

その打席
イチローが打った球は
大きな孤を描いた。